2008年07月02日

人間コントローラー

「自分コントローラー」作・中本良


ダメ人間街道邁進中の主人公。ある日、彼は謎のコントローラーを見つける。それは自分自身を操れるコントローラーだった。そのコントローラーを通してあぶり出される社会問題。社会が抱える問題人間の実情と感情をキモやかに描く中本氏渾身の名作。(解説・サンパスロ・直子・モンゴメリン)

第一話「コントローラーってレベルじゃねぇぞ!」

 トイレ掃除をしていると、ゴボゴボとコミカルな音が鳴り響き、私は便器を覗き込んだ。
 ぷっかりとコントローラーが浮いていた。
 私はそれを取り上げマジマジと見つめてみる。

 ゲームだ。ゲームのコントローラーだ。

 人気家庭用ゲーム機用のコントローラーだった。何故トイレから出てきたのか?よくわからないが汚いのですぐにスーパーの袋に詰めて、燃えないゴミとして捨てることにした。

 ゴミを捨て場で、一人暮らしの割には多すぎるゴミを捨て終わると、近所の主婦が子供を連れてゴミを捨てにやってきた。私は近所付き合い&挨拶が大の苦手なので、すぐさま目をそらしその場を後にした。

 すると、子供がアホみたいに騒ぎだした。「おがーざん。げーむのこんろろーらー。こんろろーらーがすててあるぅ」どうやら、私のゴミ袋の中身に気づいたようだった。
 私はちらりと目をやる。子供がゴミ袋ごしにコントローラーをいじっているにも関わらず、母親は無視してゴミを捨てていた。人ン家のゴミを触るとは、プライバシーの侵害なり。叱らないとはなにごとか。最近の親というのはどうしてあぁ色っぽいんだ!おっぱいが大きいじゃないか!

 と、まぁそんな感じで歩き出すと、私の体はあらぬ方向へと動き出した。脳では真っ直ぐ進行せよと命令を出しているにも関わらず、右へ左へと勝手に進行していってしまうのだ。まるで操られているように。
 私の体はその場をグルグルと歩き回り出してしまった。
「あぁ、昨日遅くまでスケベビデオの自発的批評をしていたからな」などと脈絡も無い原因を推測しながら、ゴミ捨て場にいる母子を見た。まだ気がつかれてはいないようだった。
 こんなところを見られたら、完全に頭のおかしい人に思われてるか、もしくわキッチーだと思われてしまうに違いない。ただでさえそう思われているかもしれないのに、これ以上はよろしくない。
 私は動きを止めようと、全身の筋肉を硬直させた。だがそれはまったく通じず、私の体はぐっしょりと汗で重くなり顔には血液が収束していくばかりだった。普段一部分を硬直させることには慣れているのだが、全身は耐えられない。息苦しくもなってきた。

 主婦は私のチクタクバンバン行動にまったく気付かずごみ処理にせいを出している。子供はコントローラーのスティックをグリグリまわしている。私の体はグルグル道を回っている。
 私はあまりのスピードに声が出そうになったが、これで「わぁ!」だの「ふぅー!」だの言ったら、さすがに気付かれてしまう。
 大道芸人だと思ってくれればよし。だが大道変質者と思われたらばあの主婦と淫乱な不倫関係には陥ることはまず無い。私は焦り、必死にその声を喉で押しつぶした。

 しかし、押しつぶすと逆に声にならない声が出てしまう。空気と振動が潰しきれない喉の隙間から抜けて、丁度おケツに圧縮された大腸内空気のように「しゅぽー・・・」とスカしたやつが変わりにこんにちはしてくるのだ!
 私は機関車よろしく「しゅぽ、しゅぽ」と煙は無い感じの汽笛を鳴らしながら、ぐるぐると歩き回っていた。その全身を真っ赤にうっ血させて。
 恥ずかしさと息ぐるさと心強さをシンメトリカルドッキングさせた気持ちがこみ上げる。も、もうだめだ!バレてしまう!一体この不可解行動はなんなのだ!何者かが俺を操っている!そうとしか考えられない!
 犯人は誰だ!会社の上司か!いや同僚!?いやそんなわけがない!俺のデスクはいつもパーテーションで区切ってある。だれからも見られないようになっているのだ!
 そう、ちくしょう!会社め!上司のゲリ沢め!なにが「君だけにできる仕事があるんだ」だ!毎日、会社のクレームが無いかどうか2ちゃんを閲覧するだけじゃないか!俺を退職に追い込もうって寸断だな!いいだろう!このまま一生2ちゃんをさらう男になってやろうじゃねぇか!俺を、俺をなめるなよぉ!俺の勇気を見せてやる!破壊してやる!光になあぁれぇええ!

 と、まぁそんな私のぐるぐる&勇者王状態を主婦が見ているのに気がついた。その顔はゆがみ、怪訝そのものである。
 バレた。
 だが、作り笑いを浮かべ会釈をする余裕もない。私には主婦の顔が幾つにも並んで見えていたのだ。高速で回っているので主婦の怪訝でゆがんだ顔が忍者分身殺法のように見えている為、会釈をするにも、どれを目標にしていいかわからないのだ。
 しかたなく、私は全部の主婦に会釈をしてみた。
 案の定、主婦はたっぷりと身の危険を感じ、そのまま子供の手をとり小走りに消えていった。それと同時に、私の回転分離機状態が解かれていく。どうやら、症状がおさまったようだった。

 私は惰性に身を任せつつ力を抜き、短距離走を終えた陸上選手のように動きを止めていった。今まで塞いでいた息を一気に吐き出して、大きく深呼吸を一回。
「一体、なんだったのだ・・・」
 と、ロボット物のナレーターのようなことを口走り、周りを確認した。
 スズメが鳴きながら電線に戻ってくる。それまで回転し混ざり合っていた風景も舞台背景のように整然となっていた。私は涙を拭いて家に戻ることにした。
 疑問が頭で2転3転する。病院はどこに行ったらいいのだろうか?症状を聞かれてたらどう説明すればいいのだろう?と、いうよりもう手遅れなのでは・・・?
 そして玄関までの道のり不安と疑問に脳内メモリを消費していると閃いた。

 主婦のゴミだ。

 主婦がゴミを捨てだした時、私の体はチキチキバンバン猛レースをはじめたのだから、きっとあの主婦のゴミがなんらかの作用を引き起こし私に数学的理論を屈がえした行動を発動させたに違いない、と。
 そして私は、再度ゴミ捨て場に直行した。

(アイキャッチ)
「人間コントローラー!」
チャラリラリーン♪

(CM)
「後藤のせんたっき!」
後藤〜のせんたっき〜♪後藤〜のせんたっき〜♪強盗〜のせんたっき〜♪強姦〜のせんたっき〜♪後藤〜のせいじょう〜い〜♪
「みんな!買ってね!そして今すぐ死ね!」
ごーとーおーのせんったき〜♪
(CM開け)

(アイキャッチ)
チャラリロリララ〜そーん♪
「人間コンジローム!」


 とりあえず、缶ゴミからを調べるも一切妖しいところがない。あるとすれば適当に潰してあるだけでちゃんと潰してない缶が多く見られるところだ。
 ちゃんと潰さないとかさばるだろーが!などとエコエコする感情をリサイクルするように私は冷静になり、思考を巡らせた。

 考えてもわからないので、とりあえず私は主婦の捨てたゴミ袋を調べてみることにした。そして私は驚愕の事実を知った。
 あの主婦からは想像もつかない派手な下着が入っているではないか!!ないか!!デーハー下着でポイントアップ!入っているこの瞬間を見逃すなよ!サラエボ!

 とりあえず、ジャージのポケットにそれを押し込んで、私は自分の顔を何度も何度も拳で殴ってそれを袋に戻した。再度、落着きを取り戻し、他のゴミ袋も調べてみたがいまいちクルような下着は見当たらなかった。
 今、思ったのだが下着をあさる行動の記憶があまりないのに異様なまでに体にズシリと疲労感があるのは何故だうか。もしかしたらまた誰かに操られていたのではないだろうか!いや違う。違うよ。

 そんな興奮も冷めやらぬ中、私は自分の捨てたゴミ袋に目がいった。
「あ、このゴミ袋に下着をつめて持ち帰ればかなり自然な感じがしないでもないかな?」と思ったからだ。
 そのおかげで私はあのコントローラーの存在に気がつくことができた。
「そうだ、あの子供がスティックをグリグリしてたな・・・」と。
 それに良く考えればこのコントローラーの登場は無理があった。トイレにうっかりコントローラーを流すか、それとも少し頭のおかしい作家が登場シーンに困って書いたかその二つしかないような状況だったからだ。たぶん、後者であろうね。
 私はおもむろにコントローラーを取り出した。

 そしてしばらくそのコントローラーを見つめてやっぱりAボタンから押してみた。
 すると私の視界は垂直に上がっていったのだ!おお、チェホンマンってこんな感じで風景が見えるのか!という感じに。そして下を見ると西洋の妖怪デュラハンのような首のない人間がコントローラーを握って立っているのが見えた。
 私は驚いてとっさにBボタンを押した。
 すると、私の視界は元の170センチの中肉中背のものに戻った。

 私はこう見えてもなかなかのゲーマーでバイオハザードは1時間半でクリアーするほどの腕前だ。だからやばいときはとっさにBボタンでキャンセルできる能力に見舞われている。親に感謝するべき特質能力だ。
 だからデリヘルだってキャンセル&チェンジザワールドしまくりで大体妥協できるレベルでプレイインザワールドステファンレコできるのだよ。諸君。
 
 つまりさっき見たデュラハンは私だったのだ!私の体から私の首が離れたのだ!要するに……。

 このコントローラーは!私自身ををコントロールできるというものだったのだ!

 このコントローラーとの出会いから全てが始まったのだ。私の壮大なる計画、地球大操縦計画が……。

続くってね。
posted by nakamotoman at 12:16| Comment(3) | TrackBack(0) | 中本良 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拝読いたしました。
本筋がスイスイと進まず、あちこちに寄り道していく感じがすごく良いですね。
あと、デリヘルでチェンジに必要なのはタイミングとハートです。宮田一郎のカウンターと一緒です。
Posted by リーダー at 2008年07月03日 12:41
「続くんか……orz」
 というのが読後第一声でした。
 なんだろうこのシュールな感触。
「ピタゴラスイッチ」のピタゴラ装置DVDを数時間見続けた後のような「現実に戻れなさ」を感じる……んですけど。
Posted by メープル at 2008年07月03日 17:58
読んでくださりすいませんでした。
冷静になって読み返して見ると、児童推薦図書に指定したいくらい素晴らしい内容ですね。
この調子で第二回もがんばります。

予告
人間コントローラー
第二回「え!?マジで!?あぁ、冗談ですか。え?どっち?え?あぁ……」の巻。

乞うご期待。
Posted by 中本良 at 2008年07月03日 23:56
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